「働くセーター」を編みました

制作記録

「なんでもないセーターを編みたいな」
シンプルで何にでも合わせやすく、着心地がよくて毎日でも着たくなる、1枚あると安心、重宝するセーター。「なんでもない」というのは一見簡単そうだけど、どこかひとつが気に入らないと定番にはなれないから、実は結構ハードルが高いと思うのです。

保里尚美さんの「働くセーター」

新刊情報でタイトルとカバー写真を目にした瞬間、そんな欲張りな希望を一気に叶えてくれそうな予感がして、発売前から楽しみにしていました。

保里尚美 文化出版局 2020/10/23発売

まず、この本、写真がとてもいいのです。

モデルとして登場する皆さんはセーターの持ち主ご本人。まさに保里さんがその方たちのために編んだ物だから、とても似合っていて、しっくりと馴染んで着心地が良さそう。

プロのモデルさんのキチッと隙なくスタイリングしたクールなビジュアルももちろん素敵ですが、温もりのある写真から伝わってくる、いい意味での生活感や親しみやすさが、自分が着たときのイメージを描きやすくしてくれているのだと思います。

指定糸はジェイミソンズのスピンドリフト(Jamieson's Spindrift)。
フェアアイルなど多色の編み込みに使うことが多いですが、これを2本どりにして編んでいます。シェットランドヤーンは軽くて暖かく、毛玉もあまり気にすることなく長く着られるので、定番セーターにはもってこいの糸。そしてなんといっても楽しみなのは200色以上あるジェイミソンズからお気に入りの色を選ぶことです。

ぼんやりとグリーンとグレーの2色にしようとは決めていたものの、グリーンやグレーとひとことで言っても微妙な違いで何色もあるわけで、散々迷って選んだのが788のLeaf と140のRyeでした。

Leafはしっかりとグリーンだけど重過ぎない色味。Ryeはかなり薄いグレーにイエローが点々と入った明るい色。さてこの組み合わせ、吉と出るか凶と出るか?

糸は実際に見て選びたかったのでジェイミソンズを全色揃えているシェーラに買いに行ったのですが、その時に「本のゲージはかなり緩いから必ずゲージを取ってから編み始めて」とアドバイスをいただきました。SNSで編んでいらっしゃる方の投稿を見ても、針のサイズを1、2号上げている方が多いようですね。

私も手がきつめなので指定より1号上げて編みました。
でも、編んでる途中で思いました。これは緩めに編んだほうがよかったんじゃないか?と。ジェイミソンズ2本どりというのはかなりがっしり硬いし、滑らかな糸ではないので「ぐわっし、ぐわっし」と編むのに結構力がいるのです。本で見るふんわり柔らかそうな風合いに比べて、自分の編み地がゴツゴツした感じに思えて、ちょっと不安がよきる……

編むこと自体はそれほど難しいものではありません。ネックから編み始めてトップダウンでぐるぐると輪編みですし、ほとんど表編みでできてしまいます。


袖を編むときは身頃をたたんでゴムでまとめておくと重さと絡まりが軽減されて編みやすくなりますよ。


2目ゴム編み止めが苦手で、ちょっとそこだけがウッとなりましたが、シンプルなデザインだけに仕上げは丁寧に。別の編み地で練習して、手順の確認と糸の引き加減に慣れるときれいにできると思います。

心配だったゴツゴツ感は水通しで解決。ふんわり柔らかくなりました。
糸が膨らんだ分、若干幅が広がって丈が縮んだので、ご参考までに水通し前後のサイズを。

水通し前水通し後伸 縮
身 幅44cm45cm+1cm
着 丈56.5cm55cm−1.5cm

さて、完成!
編み始めたときは2色のコントラストがちょっと強すぎたかなと思いましたが、見慣れるうちに気に入ってきました。そして編み目が多少揃っていなくても目立たないというメリットも。


ネックが少し立ち上がった感じとか、袖口と裾の少し長めのリブがシンプルながらも良いアクセントに。袖が細めかなと思いましたが、アームホールはわりとゆったりしているので動きやすくて、この辺りに「働くセーター」のこだわりを感じます。きっと保里さんが何枚も編みながら少しずつ育ててきたパターンなのでしょうね。
今度はオレンジ系の色でカーディガンを編みたいな、とかオーバーサイズのセーターも良さそうとか、なかなか中毒性のありそうなパターンです。

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